電子帳簿保存法令和5年度改正解説と検討の手引き

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コラム

日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)からのお知らせ

 第3回 システム依存性についての質問

Q24. システム依存性とは何か?
A.システム依存性とは、記録情報にアクセスするための特定の装置またはコンピュータ・プログラムの必要性をいう。アクセス等のために、特定のハードウェアまたはソフトウェアが必要になる情報は、システム依存性があると考える。特定のハードウェアまたはソフトウェアを必要としない情報は、システム独立性がある。情報保存技術および媒体は、それぞれ異なるシステム依存性の特性を持っている。
Q25. システム依存性にはどんな要因が影響するか?
A.人が読取れる情報を保存する技術および媒体は、機械読取り式の情報を保存する技術および媒体よりもシステム依存性は少ない。例えば、紙の文書は優れたシステム独立性を示す。紙の文書には、記録情報にアクセスするための特別なハードウェアまたはソフトウェアの必要が無い。

マイクロフィルムシステムは、ハードウェア依存性が最小である。紙の文書と同様に、マイクロフィルムの画像は、人が読取り可能な情報でできている。情報が小型化されているために、肉眼で読めるように表示または印刷するには拡大しなければならないが、必要な装置はいつでも入手できるものである。コンピュータ・データベースを使ってマイクロフィルムの画像を検索するのでなければ、マイクロフィルムシステムにはソフトウェア依存性はない。あったとしても、ソフトウェア依存性は記録の検索に限定される。またこの依存性は、文書画像の可読性には影響しない。

これに対して、機械読取り式フォーマットでコンピュータ記録媒体上に記録された画像、データベース記録その他の情報は、ハードウェアおよびソフトウェアに大きな依存性を持つことになる。磁気媒体や光ディスクは、特定のハードウェア(ドライブやジュークボックス類)と共に用いるように設計されている。全てのコンピュータ処理方式の情報は、特定のアプリケーション・プログラムで検索その他の処理が行われるようになっている。

Q26. システム依存性はどのように文書のライフサイクルに係わっているか?
A.システム依存性は、文書のライフサイクルの非活用段階において、将来の利用のための情報の保存に影響を与える。ハードウェアやソフトウェアが将来使えないかも知れないというリスクがあり、そのリスクは時間と共に増大する。従って、システム依存性は、記録情報の長期保存或いは永久保存を複雑にする。

もし、ハードウェアやソフトウェアが利用できなくなると、記録情報は将来アクセスできなくなる。このような事情から、最良の実践は、システム依存性の小さい或いは無い保存技術および媒体を選択することによって、リスクを最小にすることである。

Q27. システム依存性はどのように媒体の安定性に関連するか?
A.ある媒体の寿命とアクセス可能な寿命の間には差があり、前者が媒体の技術的特性によって決まるのに対し、後者は必要なハードウェアとソフトウェアがあるかどうかによって決まるものである。アクセス可能性に支障をきたすことによって、システム依存性が媒体の安定性を無意味にしてしまうこともあり得る。これは、コンピュータ媒体が、特性的にはそれらを扱うハードウェアやソフトウェアよりも長い寿命を持つ場合に、しばしば起きるケースである。

光ディスクや磁気テープは、数十年またはそれ以上の安定性があるかも知れないが、そのように長く使用し続けられるコンピュータ記憶装置は歴吏的に例がない。大多数の光ディスクドライブや磁気テープユニットは、最大耐用年数を10年として作られており、古い機械につきものの頻繁な修理や高い保全コストのために、通常その年数がくる前に交換が必要になってしまう。コストパフォーマンス特性が改良された新しいモデルが出てくることと、変化し続けるアプリケーションの要件が結びついて、比較的短い間隔で(多くの場合5年またはそれ以下で)交換することがすすめられている。新しいコンピュータ記憶装置が前に記録された媒体を受けつけるという保証はない。

更にハードウェア要素に留まらず、コンピュータ・ソフトウェアが、前に記録された情報が使えなくなるような形で更新その他が行なわれることがある。例えば、電子文書画像システムにおいては、新バージョンのソフトウェアは、全ての古いバージョンで作られた画像またはデータベース記録を読めるとは限らない。

1990年代初頭以降、いくつかのイメージシステムベンダーは、その製品系列を、メインフレームおよびミニコンピュータのハードウェア環境からクライアント/サーバー処理環境に移行させた。その過程で、これらのベンダーはソフトウェアを書き換えており、彼らの以前の製品で作られ維持されていた画像またはデータベース記録に対する互換性の問題を引き起こした。

Q28. 上位互換性(Backward Compatibility)はどうなるか?
A.前に記録された媒体の有用性を維持するために、新しい光ディスクドライブや磁気テープユニットは、読取り目的についての上位互換性を持たせることができる。即ち、あるメーカーの製品系列の旧モデルで記録された媒体から、情報をこれらの新モデルで読取ることができる。新バージョンのアプリケーション・ソフトウェアも同様に、先行製品で使われたフォーマットの画像、データベース記録その他の情報を読取ることができる。

このような上位互換性がコンピュータ業界では慣習になってはいるものの、ベンダーが全ての将来の製品でこれを続けるかどうかは保証できない。逆に、コンピュータ技術の歴史が示唆することは、上位互換性は、2〜3世代の装置間またはソフトウェア間の橋渡しをするのがせいぜいである。古い媒体や記録フォーマットに対する支援は、いずれは段階的に廃止されてしまうのである。

更に、上位互換性は、コンピュータ製品がいつ製造中止になったかとは無関係である。1980年代初頭以降、光ディスクドライブおよび磁気テープユニットのメーカーは、あるモデルおよび製品系列の製造を、交換手段或いは移行手段を提供することなく中止したし、またあるメーカーは操業を完全に止めてしまった。一例として、1988年より前に製造された書込み専用の光ディスクで、その10年後に市販されている光ディスクドライブを使って読取れるものは皆無である。

Q29. マイクロフィルムの表示装置や印刷装置が製造中止になったらどうなるか?
A.マイクロフィルムシステム業界は、装置メーカーおよび媒体メーカー、VAR (システム販売業者)、サービスショップ、コンサルタント等を含めて数千の定評あるベンダーを抱える、高度に安定な世界規模の産業である。マイクロフィルムのリーダおよびリーダプリンタは、多数のメーカーから広く入手可能である。世界中の企業、政府機関、その他の組織にある大量の設置台数を考えると、マイクロフィルム製品が、将来製造中止になるとは考えにくいことである。実際、新モデルが引き続いて導入されている。

マイクロフィルム機器のあるモデルの製造中止によって、記録情報の読取り可能性は、コンピュータ技術の場合と違って影響を受けることはない。マイクロフィルム業界では、異なるベンダーの製品間の記録情報の互換性が優れている。ユーザーは、記録情報が、世界中何処でも閲覧や印刷が可能という確信をもって、マイクロフィルムをやり取りすることができる。

マイクロフィルム装置は、過去に作られた文書の画像の表示や印刷について優れた上位互換性を持っている。同様に、情報の管理者は、今日作られたマイクロフィルムの画像が将来導入されるリーダやリーダプリンタとも互換性があるというしっかりとした確信を持つことができる。

Q30. コンピュータ処理可能な情報の有効寿命を延ばすためにデータを移し替えたらどうか?
A.理論上は、電子文書画像、データベース記録、その他のコンピュータ処理可能な情報の読取り可能性は、ハードウェアやソフトウェアの要件の変化に合わせて新しい媒体や新しいファイル用フォーマットに定期的に変換することによって、無限に延ばすことが可能である。このプロセスをデータ・マイグレーション(データ変換)という。データ変換の間隔は、互換性を持つハードウェアおよびソフトウェア要素の耐用年数によって決まる。例えば、電子文書画像システムは、5年以内に交換あるいは大きなグレードアップが行なわれるようである。但し、記憶装置はもっと早く交換されることもある。

データ・マイグレーションの概念は、最低でも次のような前提の上に立っている。 即ち:
  • 現存する磁気または光媒体に記録された情報が、機能性を失うことなく異なるフォーマットに容易に且つ確実に変換されること。
  • 変換は、記録情報が、システムの陳腐化によりアクセスできなくなる前に行なわれること。
  • この変換のコストは法外に高くないこと。
  • 必要な変換処理手順が、組織の作業ルーチン内に組込むことができること。
  • 記録保存パラメータによって決まる期間に対して、データ・マイグレーションを規則的な間隔で繰返すこと。
  • 移し替えたデータは、読取り可能性を確認するために検査すること。
  • 組織の情報システム部門またはその他の適切な能力を備えた事業単位が、データ・マイグレーションの実施に責任を持つこと。
  • 記録保存の全期間にわたって、データ・マイグレーションのための充分な資金が継続的に使えること。但し、永久記録の場合無期限となる。
データ・マイグレーションに必要となる時間、労力、および費用を、過小評価してはならない。大多数のシステムで、変換の労力はピラミッド型になる。情報の量が増えるほど、連続的データ・マイグレーションに長い時間がかかる。加えて、データ・マイグレーションは、情報を一つのフォーマットから別のフォーマットに変換するのに、高価な特注のプログラムが必要になる場合がある。

Q31. データ・マイグレーションの代替案としてエミュレーションはどうか?
A.電子文書のアクセス可能な寿命を伸ばす方法としてのデータ・マイグレーションを批判する者は、データ・マイグレーションが必要とする大きな資源を、長期間にわたって負担しようとする或いは負担できる組織は殆ど無いのだから、データ・マイグレーションは希望的観測に過ぎないと言っている。ある情報の専門家らは、代替案として、新しいコンピュータで古いソフトウェアを走らせるようにして、元々のファイル・フォーマットの読取り可能性を維持し、データ・マイグレーションの必要性を除くというエミュレーション法を提唱している。アイデアとしては面白いが、まだ開発の緒についたばかりであり、直ちに或いは短期間のうちに事業にインパクトを与えるものではない。システム依存性の問題に注力するためのエミュレーション戦略の特性、実現可能性、および費用効果性を測定するには、かなりの研究をなお必要とするであろう。エミュレーションという解決策の商業的利用可能性や、妥当性については予測できない。

Q32. マイクロフィルムの映像に定期的マイグレーションは必要か?
A.マイクロフィルムの画像は、定期的な間隔で変換の必要はない。適切な拡大率が利用できるならば、マイクロフィルムの画像は、新しいハードウェア要素を使って直ちに見ることができる。