デジタル技術の進歩は、文書の電子化保存に多大の貢献をもたらしていますが、「長期保管に非常に有効なツール」としてマイクロフィルムの価値が見直されています。これの利用に関するQ&Aを連載でご紹介します。
尚、当Q&Aは、ロングアイランド大学パーマー校図書館・情報学科教授William Saffady氏の著書 “Film-Based Imaging In The Document Life Cycle:FAQs For Best Practices” から引用させて頂きました。
Q1. 文書のライフサイクルとは何か? |
A.文書は、そのビジネス上の価値を反映して、参照頻度が変化していく。その性質上、懸案中の業務文書は、作成または入手直後の数週間または数ヶ月間は盛んに参照される。この期間には、何度も参照され、頻繁にコピーされ、広く配布される。しかし、文書が古くなると、その業務上の価値と参照頻度は一般に低下する。これは徐々に起きることもあれば急激に起きることもある。この文書の作成または入手からその廃棄または永久保存に到るまでの、参照頻度の変化のパターンを「文書のライフサイクル」という。
ライフサイクルの概念は、紙、マイクロフィルム、電子フォーマットのいずれの文書にも適用できる。また、コンピュータ・データベース、科学的および医療画像、録音、ビデオ記録のような他の方式の記録にも有効である。レコード・マネージメントの実務においては、ライフサイクルの概念は、特定の種類の文書についての、ライフサイクルの評価による保存期間の決定につながる。ある文書について参照頻度がゼロに落ちたときには、そのライフサイクルは終わり、文書は廃棄してもよい。
けれども、文書によっては長いライフサイクルまたは無期限のライフサイクルを持つものもある。そうした文書は、頻繁には参照されないかも知れないが、継続的に存在する経営管理上のまたは学術的な価値があるために、長期保存または永久保存が妥当とされ、オフィスに保存されるか、または公文書館や図書館のような文化的機関に保存される。
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Q2. ベストプラクティス(以下最良の実践)とはどういう意味か? |
A.最良実践は、ある目的を成し遂げるのに最も効果的で効率的な方法である。機能性、コストその他の要素の観点から、最良の実践は、業務上の問題やプロセスについて最も賢明な手順である.当然ながら、最良の実践は、ある問題またはプロセスについての他のいずれのアプローチよりも優れている。最良の実践は通常、経験に基づいており、その経験はその有効性を確かめるための研究や専門家の分析によって補完することができる。
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Q3. 最良の実践は文書のライフサイクルとどのように関連するのか? |
A.最良の実践の概念は、情報管理を含めた多くの業務活動に当てはまる。文書のライフサイクルは、その参照の頻度によって活用(使用頻度の多い)段階と非活用(使用頻度の少ない)段階とに分けられる。それぞれの段階は、文書保存、検索、コピー、配布および保全について、別個の機能上の要件を持っている。文書のライフサイクルの活用段階は、企業の業務運営を支援するために記録された情報(以下記録情報)をタイムリーに利用することが強調される。文書のライフサイクルの非活用段階では、主として将来必要になるかも知れない情報の保存が重要になる。
文書のライフサイクルの各段階について、最良の実践は効率良く業務を行うために欠かせないものである。特に、最良の実践は、各段階について最も効果的な情報保存媒体を決める。活用段階用に選ばれる保存媒体は、参照、編集、配布等の目的で文書の検索が便利にできるものでなくてはならない。非活用段階用に選ばれる保存媒体は、しばしば長期間にわたって、費用効果性および信頼性の高い文書の保存ができるものでなくてはならない。決められた保存期間を通して文書の検索性を継続して維持し、また文書の保存要件を満たす物理的化学的な安定性を備えたものでなくてはならない。両段階において、文書の保存媒体は、文書類に課せられる全ての法的要件を満たす必要がある。
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Q4. 文書のライフサイクルの管理にはどんな技術や方法が利用されるか? |
A.文書は、紙、写真、または電子的(コンピュータ処理可能な)フォーマットで保存することができる。紙フォーマットは、技術図面、プレゼンテーション資料、紙以外のベラムやマイラーで作られる文書まで含まれる。マイクロフィルムは、最も重要な文書保存用の写真媒体である。写真による文書の他のフォーマットには、一般の写真ネガや医療用X線写真が含まれる。電子文書のフォーマットには、文書スキャナによって作られるデジタル画像や、ワープロソフト、Eメール、その他のコンピュータ・プログラムによって作られる文字コード情報が含まれる。
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Q5. 文書ライフサイクル管理におけるマイクロフィルム化の利点は何か? |
A.マイクロフィルム化の特質は、文書のライフサイクルの非活用段階に係わっている。 特に:
- マイクロフィルム化は、記録情報を小型化し、保存スペースを縮小する。
- 撮影、現像、保存が適切に行なわれれば、マイクロフィルムは、長期保存要件のある文書には優れた物理的化学的安定性を持っている。
- マイクロフィルムは人が読める情報なので、システム依存性が最も小さく、記録情報の将来の検索、表示、或いは印刷に対して重要な要件を満たしている。
- マイクロフィルムは規格化の長い歴史を持ち、異なるベンダーの製品間における文書情報の互換性が格段に優れている。
- マイクロフィルムの法的容認性は、文書を、裁判の審理その他の司法手続における証拠として認めることも、また法律や政府条例によって課せられた文書管理(文書保存)の要件を満たすことも確立されている。
これらの利点は、記録情報の体系的且つ経済的な管理にとって重要である。大多数の業務用文書について、文書のライフサイクルの非活用期間は活用期間よりも長くなる。
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Q6. マイクロフィルム化は、文書のライフサイクルの活用段階においても利点を持つか? |
A.マイクロフィルム化は記録情報の長期保存に対する利点に加えて、頻繁に参照される文書においても検索、管理、および配布を改善し、業務運営の促進に役立つ。
文書が小型化されると、大量の記録を、それを参照する担当者の直ぐ近くに保管することができ、必要な情報を得るのに離れたファイル保管場所まで出かける手間が省ける。マイクロフィルム化は、ファイルの散逸を防ぐこともできる。ひとたび文書をマイクロフィルム化してしまえば、個々のページを紛失したり順序を間違ったりすることは困難もしくは不可能である。関連する利点として、マイクロフィルムに記録された情報は、変更や削除ができない。
更に、マイクロフィルムは、地理的に分散した部門や、出張所その他の場所に配布するために容易にコピーすることができる。マイクロフィルム化によって、普通の業務用封筒に数千ページ分を収めることができるので、郵送費を削減ずることができる。
検索頻度の高い文書管理システムにおいては、コンピュータ索引を用いて、マイクロフィルムの画像を高速検索するコンピュータ支援検索(CAR)が使われる。デスクトップの端末装置やFAX装置へのマイクロフィルム画像の電送も可能である。
しかしながら、最良の実践の観点からは、頻繁に参照される文書には、文書の保存、検索、配布が完全にコンピュータ化された電子文書画像化技術がより有用である。特に、電子文書画像化は、多数のユーザーによる大量検索処理、或いは、文書を規定の順序でワークステーション間でやり取りするようなワークフローでは、優れた機能を発揮する。
このような場合、マイクロフィルムシステムの要素を電子文書画像システムの中に組込むことによって、コンピュータベースのシステムにとっては大きな問題となっている長期保存の要件を満たすことができる。このようなハイブリッドの画像化の方策は、文書のライフサイクル全体の効果的管理にとって、しばしば代表的な最良の実践となる。
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Q7. マイクロフィルム化はモダン技術か? |
A.辞書の定義では、「モダン」と「現代の(コンテンポラリ)」とは同義とされる。マイクロフィルム化は、正真正銘モダン技術である。即ち:現代文書管理に必要であり、他の技術で代替できない独特の機能性を備えている。
マイクロフィルム化は、革新的技術でもある。マイクロカメラ、リーダプリンタ、自動検索システムその他のマイクロフィルム製品には、マイクロプロセッサ、コンピュータ・メモリその他の電子機器が広く使われている。多くのマイクロフィルム機器が、電子文書画像化機能を取入れており、情報保存検索用のコンピュータを用いたシステムの中に効果的に組込まれている。
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