次の3つの事例についてご紹介します。
(1)電子帳簿保存法(1998年7月施行)で使う財務・会計システム
電子帳簿保存法によれば、「国税関係帳簿書類の保存義務者は、国税関係帳簿書類の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、納税地等の所轄税務署長等の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、その電磁的記録の備付け及び保管をもって当該承認を受けた帳簿の備付け及び保管に代えること、又はその電磁的記録の保存をもって当該承認を受けた書類の保存に代えることができる」として、帳簿書類の電子保存が可能となりました。また、COM(Computer
Output Microfilm)による保存も可能です。 システム構築に際しては、
・ 帳簿書類の全部を電子帳簿とする体制
・ プリント帳簿と電子帳簿を併用する体制
・ 電子帳簿で3年間保存し、その後COMによる保存とする体制
などが考えられます。どの体制とするかは企業の現状と、今後「内部統制」の仕組みを盛り込むための体制をどのように構築するのかの両面から検討する必要があります。ただし、ここまででは、「各種証憑書」については、紙による保存が必須となります。なお、次に保存
などの要件をまとめました。

電磁的記録等による保存等の要件
電子計算機処理関係
真実性
@
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電磁的記録の訂正・削除・追加の事実及び内容を確認することができるシステムを利用すること。
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A
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各帳簿間において、相互にその記録事項の関連性を確認できることができるようにしておくこと。
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B
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電子計算機処理システムの開発関係書類、事務提要等を備え付けておくこと。
可視性
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可視性
C
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電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作マニュアルを備え付けて、画面・書面に速やかに出力することができるようにしておくこと。
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D
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電磁的記録の訂正・削除・追加の事実及び内容を確認することができるシステムを利用すること。
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COM処理関係
真実性
@
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COMの作成・保存に関する事務提要及びCOMの作成責任者等を記載した書類を備え付けておくこと。
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可視性
A
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索引簿を備え付けておくこと。
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B
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各COMごとに、その記録事項のインデックスを出力しておくこと。
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C
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マイクロフィルムリーダプリンタ及びその操作マニュアルを備え付けて、画面・書面を速やかに出力することができるようにしておくこと。
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D
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保存期間の当初3年間については、電磁的記録の並行保存等により検索機能を確保しておくこと。
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(2)改正電子帳簿保存法(国税関係書類のスキャナ保存、2005年4月施行)で使う財務・会計システム
この法律の施行により、各種証憑書の電子保存にも道が開かれました。法の詳細と対応システム導入法については、既刊の「実践e−文書法」に詳細がありますので、当HPから購入、または全国有名書店にてお求めください。システム構成例としては、@業務密着型 A保管庫型(インハウス) B保管庫型(スキャン外注型)等が考えられますが、ここでは@業務密着型 A保管庫型(インハウス)について説明します。
文書管理システムの基本構成として、文書をイメージデータ変換するための機器であるスキャナあるいはスキャナ機能つきのデジタル複合機、イメージ化文書登録や文書検索・閲覧などを行うクライアントPC、イメージ化文書を保管し文書管理するサーバから構成され、通常はネットワークによって接続されます。小規模システムの場合はクライアントPCとサーバの機能を1台のコンピュータで構成することもあります。サーバ内のハードディスクを二重化したり、より堅牢で大容量の保管ストレージを使用したり、バックアップ装置を使用し障害時からのデータ復旧ができるようにするなど、システムの耐障害性を向上させることも検討する必要があります。また、イメージ化文書にタイムスタンプや電子署名を付与するために、タイムスタンプ局や認証局に接続するインターネット接続環境が必要となります。
事前準備として、タイムスタンプサービスを契約し、電子署名のためのデジタル証明書を特定認証局から発行します。e-文書法に基づいたイメージ化運用を行うためには、省庁へ申請し、承認をうけることが必要です。申請から承認までは数ヶ月要します。

@文書入力
原稿をスキャナあるいはデジタル複合機にセットし、読み取り範囲、読み取り解像度、カラー/モノクロ指定などスキャンパラメータを設定して、スキャニング開始を指示します。この操作は、クライアントPCのソフトウェアから操作する場合と、スキャナから操作する場合があります。自動給紙装置を備えたスキャナの場合は、複数の原稿を連続してスキャニングすることも可能です。スキャニングされたイメージ化文書はクライアントPCに送られ、クライアントPC内に指定されたファイルフォーマットで保存されます。
Aイメージ化文書登録
クライアントPCのソフトウェアの操作によりスキャニングされたイメージ化文書に電子署名を付与します。このときイメージ化行為者または作業責任者(紙が正しく電子化されたか手にとってチェックできる範囲の人)の電子署名が最低限必要です。電子署名は認定事業者が発行するものを使用します。電子署名を付与する単位は、1枚ごとではなく、1件ごとです。電子署名後、イメージ化文書にタイムスタンプを付与します。タイムスタンプは信頼できる第三者機関のタイムスタンプ局が発行するものを使用します。タイムスタンプを付与する単位は、電子署名と同じ単位、またはその日にスキャニングしたイメージ化文書をまとめて一括して付与しても構いません。
文書入力から電子署名・タイムスタンプ付与まで一連の流れの中で一気に実行される場合もあります。
イメージ化文書に対して検索キーを付与します。通常はイメージ化行為者がクライアントPCから手動で検索キーを入力しますが、OCRを使用して検索キーを自動登録することも可能です。ただし、OCRの認識率は100%ではないので、イメージ化行為者による検索キーの確認作業が必要となります。
イメージ化文書を帳簿システムと関連付けるため、帳簿と関連するイメージ化文書へ整理番号(たとえば、固有なIDや帳簿日付など)を付与したり、帳簿に関連するイメージ化文書へのリンク(ファイルパスなど)を設定したりします。
以上の処理を行ったイメージ化文書をサーバに保存します。
B検索・閲覧
クライアントPCからの操作により、検索キーによるイメージ化文書検索を行い、検索されたイメージ化文書をサーバから取得してクライアントPCの表示装置にそのイメージ化文書を表示します。また、そのイメージ化文書のバージョンなどの属性情報やアクセスログなども表示できる場合もあります。
さらに、電子署名やタイムスタンプを検証することにより、イメージ化文書が改ざんされたかどうかを確認することができます。必要に応じて、プリンタやデジタル複合機を使用してイメージ化文書を紙に印刷することも可能です。
C文書管理
サーバの機能として、クライアントPCから登録されたイメージ化文書を保管し、クライアントPCからの指示によりイメージ化文書を検索する機能を有します。また、バージョン管理、属性情報管理、アクセス制御、アクセスログ採取など文書管理に必要な機能が必要となります。さらに電子署名やタイムスタンプの検証機能を有することにより、イメージ化文書の改ざん検知が可能となります。
スキャナによる保存等の要件
真実性
@
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一定期間内に入力すること。
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A
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一定水準以上の解像度により読み取ること。
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B
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電子署名を行うこと。
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C
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タイムスタンプを付すこと。
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D
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読み取った際の情報を保存すること。
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E
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電磁的記録の訂正・削除・追加の事実及び内容を確認することができるシステムを使用すること。
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F
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電子計算機処理システムの開発関係書類、事務提要等を備え付けておくこと。
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可視性
G
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関連する帳簿との間において、相互にその記録事項の関連性を確認することができるようにしておくこと。
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H
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電子計算機、プログラム、カラーディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作マニュアルを備え付けて、画面・書面に一定に状態で速やかに出力することができるようにしておくこと。
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I
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電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能を確保しておくこと。
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(3)改正電子帳簿保存法で使い、経費精算システムと連動した財務・会計システム
経費精算システムと連携して、文書保管業務を業務プロセスの一つに位置付けた例です。ペーパーレスでの業務が実現でき、業務プロセス全体の利便性が拡大します。この例は1つのシステムとの連携ですが、後で述べるように「内部統制」を全社で実現するためには、各種業務システムと電子化による一元管理が不可欠となってきます。

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